The Japanese Association For Clinical Avianmedicine

会報要約 バックナンバー:第27号

会報要約 バックナンバー:第27号

1
区 分 【短報】
著 者 今西 奈穂子、今西 貴久
タイトル 血便を呈したリンパ腫のサザナミインコ(Bolborhynchus lineola)の1例
キーワード サザナミインコ、血便、排泄腔、クロアカ、いきみ、B細胞リンパ腫
要 約 間欠的な血便を主訴に来院した1歳10ヵ月齢のサザナミインコ(Bolborhynchus lineola)が、対症治療に反応しながらも第20病日に大量の下血を起こし死亡した。死後の解剖検査では、排泄腔内に血餅が充満しており、臓器全体が失血により退色していた。体腔背側には脂肪様の白色軟組織が脊柱に沿うように頭側へ増殖しており、組織検査の結果それらは腫瘍組織であることが明らかとなり、多中心性の高悪性度B細胞リンパ腫と診断された。サザナミインコのリンパ腫に関する国内外の症例報告と本症例には、臨床症状と病理所見に多くの共通点が認められた。サザナミインコにおいて、消化管運動低下や排泄行動の異常が確認された場合はリンパ腫を鑑別診断に含めること、また早期診断のために健康時に身体所見やレントゲン画像、正確な性別といった基礎情報を記録しておくことが有用と考えられた。
2
区 分 【短報】
著 者 細谷 崇、齊藤 拓、海老沢 和荘
タイトル 鉛中毒症が疑われたオカメインコ(Nymphicus hollandicus)において砂嚢切開術による金属片摘出が奏功した1例
キーワード 鉛中毒症、重金属中毒症、砂嚢切開術、金属片摘出、オカメインコ
要 約 臨床症状、問診、X線検査所見により鉛中毒症を疑ったオカメインコ(Nymphicus hollandicus)に対して内科治療を実施した。7日間を経過しても、砂嚢内金属様陰影の減少は見られず、全身状態も改善が見られないため、砂嚢切開術にて金属片摘出を実施した。手術では金属片9個中6個を摘出できたが3個は残留した。しかし、術後には顕著な臨床症状の改善が見られ、徐々に回復し治療終了まで至った。本症例においては金属片摘出が有効であったと考えられた。
3
区 分 【短報】
著 者 浅井 さつき
タイトル 多鳥種・多数羽飼育下における鳥ボルナウイルス(Avian Bornavirus)感染症の集団発生
キーワード 鳥ボルナウイルス、集団感染、PaBV-4、腺胃拡張症
要 約 個人の鳥類飼育施設内で鳥ボルナウイルス(Avian Bornavirus)感染症の集団発生がみられた。飼育鳥は6カ月~15歳齢の19種24羽(雄11羽、雌12羽、不明1羽)の集団で、最初に新規に導入されたオオハナインコ(Eclectus roratus)1羽が嘔吐を発症した。その4カ月後からルリコンゴウインコ(Ara ararauna)1羽、ネズミガシラハネナガインコ(Poicephalus senegalus)1羽、ヨウム(Psittacus Erithacus)3羽、オカメインコ(Nymphicus hollandicus)2羽、モモイロインコ(Eolophus roseicapilla)1羽、シモフリインコ(Aratinga weddellii)1羽、クロメンフクロウ(Tyto thomensis)1羽に嘔吐、両肢蹌踉、脚弱、振戦、自咬などの症状が現れ始め、11羽中8羽が衰弱や誤嚥性肺炎などののち死亡した。
病理解剖をおこなった7羽のうち6羽で重度の腺胃拡張が認められ、死亡個体のPCR検査では8羽すべてが鳥ボルナウイルス(Avian Bornavirus; ABV)陽性であった。また、生存個体16羽のPCR検査では、上述した発症例3羽に加え、非発症例のニョオウインコ(Guaruba guarouba)1羽、オオバタン(Cacatua moluccensis)1羽、アケボノインコ(Pionus menstruus)1羽およびオオハナインコ2羽の計8羽がABV陽性であった。また、陽性個体16羽中12羽でウイルスの遺伝子型を調べた結果、10羽がPaBV-4型、2羽が判定不可であった。
本事例では、新規導入されたオオハナインコによってABVが集団内に持ち込まれ、自宅や施設、往来の車中で感染が拡大し、移動や不特定多数の人とのふれあいによるストレス、寒冷な気候などが発症の要因になったと推測された。
4
区 分 【短報】
著 者 水上 昌也
タイトル ペットバードにおける左室流出路速度時間積分値(Left ventricular outflow tract velocity time integral:LVOT-VTI)の測定と考察
キーワード 左室流出路速度時間積分、サンプルボリューム、t検定、オカメインコ、セキセイインコ
要 約 人医療で心機能を評価するために近年注目されている、左室流出路速度時間積分(Left ventricular outflow tract velocity time integral:LVOT-VTI)のペットバードにおける測定を試みた。2021年3月から7月に来院したオカメインコ(Nymphicus hollandicus)27症例、セキセイインコ(Melopsittacus undulatus)19症例に対し、超音波診断装置により、LVOT-VTIについて、サンプルボリューム1mm(SVol1)および2mm(SVol2)について測定した。オカメインコのSVol1mm(SVol1)におけるLVOT-VTI値のmean(SD)は2.59(0.59)cm、SVol 2mm(SVol2)におけるmean(SD)は2.64(0.58)cmであった。セキセイインコのSVol1におけるLVOT-VTI値のmean(SD))2.42(0.69)cm、SVol2におけるmean(SD)は2.47(0.47)cmであった。オカメインコのLVOT-VTI値における対応のあるt検定の値は、t = 0.85(p > 0.05)で有意差は無いという結果だった。セキセイインコのLVOT-VTI値は同一個体で計測した8検体、および異なる11検体に関し、8検体は対応のあるt検定(両側検定)で、19検体はStudentのt検定(両側検定)を行った。8検体のLVOT-VTI値におけるt値は、t = 0.58(p > 0.05)で有意差は無かった。19検体では、t = 0.85(p > 0.05)で有意差は無いという結果であった。オカメインコおよびセキセイインコ2郡を対象にしたt検定におけるt値は、それぞれt = 0.34(p > 0.05)、t = 0.44(p > 0.05)でともに有意差は無かった。今回測定を試みた2鳥種において、LVOT-VTI値は測定可能であることが分かった。また、2鳥種に関し同一基準の設定が可能であると推測された。
5
区 分 【記録】
著 者 村上 彬祥、石田 智子、奥山 愛友、小沼 守
タイトル 胸椎損傷の疑われた神経障害性疼痛に対しガバペンチンの投与により奏功したウズラ(Coturnix japonica)の1例
キーワード 神経障害性疼痛、神経学的検査、ガバペンチン
要 約 鳥類における神経障害性疼痛についての詳細は不明なところが多く、その治療も確立されていない。本症例は、単純X線撮影および神経学的検査を実施し胸椎損傷などによる神経障害性疼痛の存在を疑った。メロキシカムの反応に乏しかったため、ガバペンチンを単剤にて使用したところ疼痛の緩和が得られ、ウズラ(Coturnix japonica)において神経障害性疼痛が疑われた際の緩和治療としてのガバペンチンの有用性が示唆された。
6
区 分 【記録】
著 者 村上 彬祥、石田 智子、奥山 愛友、小沼 守
タイトル 外傷性脳損傷後の食欲低下についてジフェンヒドラミンが奏功したセキセイインコ(Melopsittacus undulatus)の1例
7
区 分 【情報】
著 者 浅川 満彦
タイトル 野生鳥類における法獣医学的な解析の現状と今後―最新刊行の関連書籍から
8
区 分 【書評】
著 者 小嶋 篤史
タイトル 野生動物医学への挑戦:寄生虫・感染症・ワンヘルス
9
著 者 福井 祐子
タイトル 谷口稔明先生、瑞宝中綬章を受賞!おめでとうございます!
10
区 分 【海外文献紹介】
著 者 羽多野 優芳、佐々木 翔太郎、勝野 雄太、櫻井 克彦、河原 咲、竹川 真子、立石 陽子、吉田 麻央、加藤 真梨奈、細谷 崇、髙木 慎介、永嶋 惇平、羽田野 真一郎
11
区 分 【インフォメーション】
著 者 眞田 靖幸
タイトル 問題解決型プロジェクト支援事業への応募要領
12
区 分 【インフォメーション】
著 者 眞田 靖幸
タイトル 「鳥種別リーフレット」発行・販売のお知らせ
13
区 分 【インフォメーション】
著 者 眞田 靖幸
タイトル 鳥類臨床研究会 会報投稿規定
14
区 分 【インフォメーション】
著 者 眞田 靖幸
タイトル 鳥類臨床研究会会報 原稿執筆要綱
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